血圧を測ればみんな病人に

現在の血圧の基準値は、最高(収縮期)130以下、最低(拡張期)8以上となっています。少し前には最高値は140でした。さらに前には年齢プラス体重といわれていました。私にもっともなじみがあり、また妥当だと思っているのは年齢プラス体重です。基準値がどんどん厳しくなっているのがわかりますが、変だと思わないでしょうか。

現在の基準値では、老人のほとんどは高血圧症として要指導、要医療の判定を下されてしまいます。世間のほとんどが病人だという社会は異常です。これは基準値が間違っていることを意味しています。数値を変えてきたのは、何か思惑があってのことと勘ぐられてもしかたがないでしょう。人間は加齢とともに血圧が高くなります。そういう存在です。年とともに老廃物の酸化物質が増えていき、交感神経が緊張した状態が優位になります。

それは、生体が粗粒球型に移行していくことを意味しています。それが極限までいったときが死です。つまり年をとれば、血圧が高くなり、脈が速くなるのは自然なことなのです。基準値を固定してしまったことのおかしさがわかるでしょう。医師に勧められるままに降圧剤を常用すると、ますます交感神経が緊張を強め、脳に血液が行かなくなります。ぼけるのです。

腎障害を呼ぶという副作用もあります。数値に神経質になった人は、数値の上下が気になって一日中血圧を測っています。血圧は必要があれば高くなるし、必要がなければさがるものです。動くものです。それが当たり前なのです。筋緊張、めまい、肩こりなどの症状がないなら、気にすることはありません。本態性高血圧症という病名がありますが、高血圧の理由がわからないという意味です。わからないけど、高い。わからないといいながら、降圧剤を処方するのだから、変な話です。

高血圧が起こる理由は、交感神経の緊張にあります。ストレスがあれば、血圧は高くなるのです。「血圧は一日中変動しています。夜寝ているときは、重力から解放されて筋肉が弛緩しているので、血圧は低下しています。最大で100前後でしょう。朝になり、目が覚めるとともに血圧は上がっていきます。120~140になり、活力を高めていきます。日中も仕事に熱中したりすれば、一時的にさらにあがります。激怒したりすれば軽く250を突破します。

自然治癒力を取り戻す

がん宣告恐れることは何もない

なんとか順調にきている人生に衝撃を与える言葉があります。勤め人にとっては「クビだ」という解雇通告がそれでしょうし、恋人たちや夫婦にとっては「別れる」という離別の宣言、そして病人は「がんです」という医師による宣告に恐怖します。「がんに関していえば、恐れることはありません。がんが過酷な生き方に対する適応現象とわかれば、不安は最小限ですむようになります。

たとえば包丁であやまって指を切ったとき、その傷が快癒するイメージを誰もがもっています。血が流れ、痛い思いはしますが、やがて傷がふさがりかさぶたができ、それがとれたときに治癒が売します。このような明瞭ながんの恐怖を取り除くことができないでいるのです。

治癒プロセスのイメージがないのは、医師がそれを患者に示すことができていなかったからです。免疫革命と免疫療法に取り組んできた私たちは、それを示すことができるようになりました。しかし、がん治療の三大療法で患者に対してきた医師は、手術でがん細胞を切除したこと、抗がん剤および放射線治療でがんが小さくなったことを示せるだけです。患者はそれで安心し、喜ぶわけではなく、再発に怯えながら暮らしていくのです。

三大療法は、免疫系を徹底的に抑えこみ、治癒へ向かうための生命力を殺してしまいます。だから一時的にはがんがなくなったり、小さくなるものの、再発したときには、それと闘う力がなくなっています。
再発が起こるのは、がんが発病する原因を取り除いていないことと、免疫力を失わせて逆に再発を容易にしているからです。

万人にあらわれては消えるがん細胞

がんが発生することは、顔青ざめ気絶せんばかりになるような、特別に邪悪な事態ではありません。誰でも毎日、1万個ほどのがん細胞が生まれています。それを白血球がせっせと殺しているから、発病することがないのです。

NK(ナチュラル・キラー)細胞についてはすでにふれてきましたが、がんを殺すこの白血球は加齢とともに数が増えていきます。生まれたばかりではごく少ないけれど、成人するころにはリンパ球中の0~5パーセントを占めるようにな
ります。比率はその後も増えつづけます。

また愉快に笑うことで、がんを殺す力が増大することが知られています。NK細胞のキラー活性が高まるには、パーフォリン分泌が必要です。パーフォリンは、リラックスした副交感神経優位の体調で分泌が盛んになります。あらゆる分泌現象は副交感神経の支配下にあるからです。「がんは怖い」と怯えるのは、自ら悪化する状況をつくっているのであって、がんを恐れず、愉快に笑って暮らしていることこそが大事なのです。これが8億年をかけてつくりあげてきた免疫システムの素晴らしさです。

私たちが免疫のメカニズムからそれを明らかにするまでは、がんの原因は発がん物質にあるといわれていました。つまり原因は外からやってくるという理解です。しかし、私たちが接するがん患者からは、この説明で納得できる話は出てこなかったのです。「それよりも大事なことが見出されました。免疫状態を調べていくと、ほとんどのがん患者に共通する傾向があるのです。どの人もリンパ球が減少して、免疫抑制状態に陥っていたのです。早期がん患者でもまったく同じことがいえます。ここに発想の転換のきっかけがつかめたのでした。

原因は外からきているのではない。交感神経の緊張状態が長く続いているという異常事態にあるのではないか。自律神経系の最大の持ち味はバランス力です。この力が失われているのです。副交感神経の優位な状態に戻ることができず、交感神経の異常な緊張によってリンパ球が減っているのです。

発想をこのように転換して患者さんと話をしてみると、ほとんどの方から強いストレス状態のエピソードを聞くことができました。

体調のシーソーが戻らないとき要注意

からだの中を自由自在に動きまわっている白血球は、他のあらゆる臓器と同様に自律神経の支配を受けています。交感神経が優位になると粗粒球が活発化します。盛んに分裂して増えます。反対に副交感神経が優位になるとリンパ球が活発化して増えるという関係にあります。そして病気の原因は、バランスを失して増えすぎた頼粒球、リンパ球が私たちの生体に好ましくない攻撃を加えていたことにあるのです。

システムという視点、物語という視点はこれほどに重要なのです。私たちは誰でも社会関係の中で人々とつながりをもち、さまざまな関係を結んでいます。そしてそれは、つねに動いているものです。

これらの関係と動きが私たちの人生の物語をつくりだし、その中に喜びや苦しみがあります。病気はまさにこの人生のシステム、物語と関係しています。人生システムの狂いは、私たちの意志で変えていくことができます。反省して生き方を修正する。これが病気に対処する有効性のある態度なのです。あまりのシンプルさに驚かれていることでしょう。そんなことで難病が治るのか、これが正しい方向です。

複雑な人間の生体も、自律神経系の働きからシンプルに理解することができます。交感神経と副交感神経という互いに反する方向性をもつもののシーソー。ここから生まれるリズムとバランスが生きる根幹のシステムです。じつにシンプルなバランスシステムです。

複雑なものを複雑なままにしておくと、一歩を進めることができません。誰でも自分の人生上の経験で知っていることでしょう。有効な理解というものは、いつでもシンプルなものです。

病呼ぶ完全主義となまけもの

さて、リンパ球人間、粗粒球人間は、それぞれどんな人生シーンを生きるのでしょうか。

リンパ球人間は、がんになりにくく長生きする傾向があります。一気に集中するよりも持続する力がまさっているでしょう。まわりによく気が配れる高感度人間といわれるでしょう。脈は遅く、下痢気味で、アトピーや気管支喘息のようなアレルギーに悩むことがあるでしょう。風邪が重く、虫に刺されると腫れがひどく、漆にもかぶれやすいでしょう。

病気とはふだんの行いが起こすもの

免疫革命は、それまで原因をとらえることができなかったがんをはじめ、難病とされる生活習慣病の発症のメカニズムを解明しました。そのいちばんのポイントは、人間という生物を、生命のシステムとして把握したことにあります。部分を取りだしていかに微細に分析し、かつ精密に追究していっても、たどり着けないところがあるのです。モノをただそのモノとして切り離して考えることからは、よい結論は得られません。

リンパ球も頼粒球もわれわれの身体の部品、つまり構成しているモノですが、交感神経、副交感神経はシステムです。つまり、自律神経系というシステムの傾向が気質を形づくっていたのです。

システムというとなにやらむずかしそうに聞こえますが、物語といいかえてもいいでしょう。お話です。人間にいたる生命が、8億年かけて進化してきた物語。それを語るためには、その生き物はどういうものか、生きようとする力、エネルギーはどこからきているのか、生きるためにさまざまなレベルで形づくっている関係はどんなものか、それをはっきりさせなくてはなりません。そして現段階の私たち人間の身体に起こっていることを語っていくのです。

私はこれが統合的医療に求められる視点だと思っています。現代医療には輝かしい功績があります。抗生物質の発見によって多くの死者を出していた感染症を克服しました。また麻酔や無菌技術を完成させ、手術を安全に行うことができるようになりました。大事故等で亡くなるしかなかった人がこれでずいぶん救われました。これらは評価してしすぎることはありませんが、光の届かない部分を残しているのも事実です。

それががんをはじめ、難病といわれる原因不明のいくたの病気です。「病気とは何ですか?」という素朴な問いに対して、私は「病気とはその人の行いが原因で起こるものです」、あるいは「進化する過程で手に入れた機能を使いすぎるとき、または使わなすぎるときに起こるものです」と答えます。

現代人を悩ませている難病は、遺伝子の異常や外部からのウイルス等に原因があるのではありません。バランスシステムの限界を超えるストレスから起きているのです。長いあいだ続く深い悩みや働きすぎによるストレスが、自律神経系というバランスシステムの限界を超えて加わったときに起こる、システムを構成しているモノの暴走が原因だったのです。

目を覚まし1000倍に増えるリンパ球

風邪にまつわるいいならわされた言葉が多くあります。「風邪は万病のもと」「子どもの風邪は3日で熱がさがる」風邪を侮ってはならないが、過敏になりすぎてもいけないという戒めです。「馬鹿は風邪引かない」という頑強な人をからかう言葉もあります。「目病み女に風邪引き男」となると、色っぽい風情の引きあいに出されています。一生のあいだにつきあうことになる病気では、風邪ほどなじみのあるものはないでしょう。

朝起きるとなんとなくからだがだるい。熱っぽさがあって、いつものように元気よく家を出る気力がない。人生系のドラマでは、こんなふうにして風邪ははじり出す。大事な会議のあいだ中たれてくる鼻水が気になってできなかった
り、せっかくデート体のにつやつや構出てくる水準かすれ、鼻の頭だけ出粧が落ちて赤く擦りむけてしまった、といった悲喜劇も起こります。生命系のドラマでは、このとき何が起こっているのでしょうか。

私たちは、自覚できる症状が出たときに風邪にかかったといっていますが、実際はその数日前にウイルスに感染しています。ウイルス感染の病気には潜伏期間があります。ウイルスと闘うのはリンパ球ですが、ふだんはリンパ球はほとんど核しかない小さな姿で休眠しています。マクロファージから抗原が侵入したという連絡を受けると、リンパ球は目を覚まして細胞分裂をくり返します。

マクロファージは、サイトカインという高分子の物質を送って指令を出しています。小リンパ球のときには、細胞膜とほとんど核しかなかったのですが、この分裂の過程で細胞内器官を発達させ、大リンパ球になります。大リンパ球は休眠リンパ球の1000倍に増え、闘う準備が完了します。ここまでにかかる日数が潜伏期間です。